119年前の記録

119年前の記録

 今回、あることがきっかけで、かつて若松市内で営まれていた“栄水堂”と言う写真館で撮影された写真を見せていただける機会があった。はっきりと撮影時期が記されていたもので「明治40年」と書かれている。西暦で言うと1907年、今から119年前だ。

 この数枚の写真に、記念写真の本質が残されていると思ったと同時に、自分も含め、現代に生きる人たちが忘れかけている大切なことがあると感じた。なので自分自身の考えを改めて記しておこうと思う。

これらの写真には、1歳の子供の写真、七五三のような少女の写真、「建具」と書かれた半纏を着た男性、姉妹のような二人、箒を持つ女性、成人記念のような女性(お見合い用かも?)、書物を読んでいるような女性などが写っている。

COCOKARAの石井様より。

 今でいうバースデーフォトや七五三、成人記念、ポートレートなどだ。また、石井さんによると他にも出兵兵士の肖像写真も多くあるとのこと。これらを見るからに、一般の人が写真館を利用する目的は当時も今もほぼ同じだったことが伺える。しかし、撮影にかかる費用はどうだったのか。AIでサクッと調べただけだが、1枚撮影するだけで50銭~1円だったらしい。現代の価値で言えば約10,000円 ~ 20,000円だ。

 案外今と変わらないじゃんと思う人もいるかもしれない。だが、 1枚撮影するだけで と言う一文を忘れてはいけない。考えてみてほしい。

 例えば自分の子供の七五三の撮影をするために、着物を用意し、髪も整え写真館に向かう。カメラの前に子供を立たせていざ撮影。でも、露光時間(フィルムに像を写す時間)が長いので少しでも動いてしまったらその写真は失敗になる。撮影のチャンスは良くて数回。しかも、その“1枚を撮影するだけで”10,000円の出費だ。

 もしこれが家族写真だったら、、婚礼写真だったら、、、。

これはあくまで推測の域だが、どちらにせよ当時の人たちにとって写真館での撮影は大緊張の一大イベントだったことは容易に想像できる。

 ではなぜ、当時の人々はそこまでして写真を残したのか。

 それはきっとシンプルに「記録に残したいから」だったはずだ。そしてこれは現代の我々でも同じはず。119年の時を経てもなお変わらない「記録に残す」と言う目的こそが写真の本質だと自分は改めて解釈した。さらに言うと、この「残す」と言う部分が核であると思う。

 同時に「なぜ記録に残すのか」とういう点については、人それぞれの価値観があると思うので改めて考えてみてほしい。

日付と名前が記されているだけで、記録資料としての効力が上がる

 今では誰もがポケットから手のひらサイズの写真機を取り出し、好きな時に好きなだけ撮影ができる。写真屋を経営している自分でさえ同じだ。

 しかしこの小さな機械は、1世紀以上の間、家の中で眠らされた後、その時代に生きる子孫により電源を入れられることはあるのだろうか。と考える前に、すでにガラパゴスケータイでさえどっかに行ったし、写真のデータなんて文字通り跡形もない。あれだけ淡い青春時代の記録が詰め込まれていたのにだ。(むしろ消えていい記録も沢山あるけど!)

 つまり、当時の我々は写真を何千枚も撮っていたくせに、この時点で「記録に残す」ことには大失敗していたことになる。

 それに対して、大昔に一大イベントとして撮影し、手のひらサイズに印画された写真は大切に保管され、119年後の今日まで残っている。もしその写真を見るのが子孫であれば、自身のルーツに触れることができる大切な記録となる。

 100年以上というのは大げさかもしれないが、自分の子供が、やがておじいちゃんおばあちゃんになった時に、その孫が写真を見ながら「おばあちゃんかわいかったんだね」「おじいちゃんかっこよかったんだね」と言う風景があって欲しい。
 これまでも、岩城屋では基本的に何かしらのカタチにしてお渡しをすることを大前提としてきていたのもこれが理由だ。
 最後になるが、誰もが綺麗な写真、オシャレな写真を撮ることができる今、写真館としては写真を撮ることはもちろん、「残す」と言うことにも責任を持たなければいけないと改めて感じた。何十年後、はたまた100年以上経ったあとに岩城屋の写真を見てそこに会話が生まれてくれたら本望だ。
 もしかしたらこのブログも100年後の誰かが読んでいるかもしれない。2126年に読んでるキミ、ありがとう。お礼に一緒に自撮り写真に写ってあげるね。

ロゴとか鉄版画調の挿絵がドツボすぎる!かっこいい!

※写真について

先日の経営者セミナーでお世話になったCOCOKARAの石井様よりお写真を拝借し、許可をいただいた上でブログにしています。栄水堂は石井様のご先祖様が当時経営されていた写真館だそうです。このような機会をいただき本当にありがとうございました!

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