とにかくやってみる −民報サロン寄稿文1/5

とにかくやってみる

「攻める一年にする」

これは昨年、自分の写真館が3期目を迎える際に掲げた目標でした。

ことあるごとに脳裏にチラつく “Get out of your comfort zone.” という言葉があります。「自分にとって居心地の良い領域から飛び出し、新しいことに挑んで成長しよう」という意味です。なかなか思うような結果が出せず苦しんでいた中、その言葉に背中を押されるように「とにかくやってみよう」という気持ちから捻り出した一つの打開案でした。

振り返れば、これまでも「とにかくやってみる」という選択の連続だったように思います。二十歳を迎える数週間前、ただ「行ってみたい」という気持ちだけで、ワーキングホリデーで一年間オーストラリアに滞在しました。極度の人見知りで、当時大した人生経験もないまま日本を離れた自分にとっては毎日が挑戦でしたが、世界中から集まった人たちに出会えた経験は、その後の人生に大きく影響しています。

帰国後、地元の写真館に就職し、十数年働かせていただいたのちに独立し、寫眞 岩城屋を開業しました。その時も十九歳のあの頃に似た気持ちがあったように思います。ですがもちろん、ワーホリと事業経営は全く別物なわけで、経営の知識も人脈も十分ないまま始めた現実は厳しく、思うような結果は出ませんでした。しかも当時とは違い、妻も娘もいる状況。開業から一年目、二年目は、不安とプレッシャーから体調を崩したり、眠れなくなったりする日々もありました。とても苦しい期間でしたが、その状況を変えるために「やれるのにやっていないこと」がまだまだ沢山あることにも気づきました。「こんなことをやって意味はあるのか」「これは自分のやり方じゃない」などと言う、なんとも浅ましいプライドが自分の可能性を潰していたのです。

そこにようやく気づき、不要なプライドは捨てて、思いついたことはとにかくやってみる。その覚悟を込めて「攻める一年にする」という目標を掲げました。今も迷いながら進んでいます。それでも前へ、一歩ずつ。

そこから生まれたのが「100人撮るまで帰りません。」という撮影会でした。不安を抱えながら迎えた当日、百二十三組、三百三十六人の方が参加してくださいました。その結果自体はもちろんですが、そこに至るまでに、背中を押してくださる方、応援してくださる方にも沢山出会えたことがとても嬉しかったです。とにかくやってみること、プライドを捨てて正直な気持ちを発信すれば、仲間が集まってくれることを学びました。

それ以来、確実にお客様は増え、いつの間にか一、二年目のように苦しむことはなくなっていました。昨年十月には第二子となる長男も生まれ、年末年始で一息ついている今は、自分のやりたいことを仕事にできる喜びと、支えてくれる家族の存在のありがたみを噛み締めています。しかし、決して余裕があるわけでも、すべてをやり切ったわけでもありません。子どもを抱きしめて幸せを感じている時、脳裏にはまたあの言葉がチラつくのです。

“Get out of your comfort zone.”

 

福島民報社 2026年1月9日付け 民報サロンに掲載

※福島民報社にweb掲載許可の確認済み

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